今回は片麻痺の体幹機能(体の動きや姿勢)の評価とリハビリ方法についてまとめてみます。
片麻痺(体幹)について
片麻痺の回復は表面のアウターマッスルからはじまり、回復するにつれて中にあるインナーマッスルが働くようになります。
はじめに動かしやすくなるアウターマッスルとは反射が起こりやすい筋肉(神経伝達が速い筋肉)です。
反射が起こりやすい筋肉は意図的に力を入れやすい反面、力の加減が難しいという特性もあります。
そのためアウターマッスルを使った運動ばかりをしていると手足の震え、突っ張り、痛みの原因になります。
インナーマッスルが働くことで力の加減ができるようになりますが、そのためには関節が動く感覚をしっかり脳に伝えることが重要とされています。

図のように片麻痺の回復は通常の筋力UPとは異なりますので、状態に応じた運動が必要です。
体幹の評価方法
姿勢評価
体幹の主要な筋肉を姿勢保持筋と言い、体幹の筋力や感覚が左右非対称になると姿勢が崩れます。
体幹の筋力の評価は、重心線(目印をつなぎ合わせた線)と左右の高さで姿勢の崩れを確認します。

前額面(前後から見た線)

左右差も見る
- 耳たぶの高さ
- 肩の高さ
- 乳頭の高さ
- 腸骨稜の高さ
- 大転子の高さ
- 指先の高さ
矢状面(横から見た線)

フューゲルマイヤー(バランス項目)
フューゲルマイヤーという片麻痺評価のバランス項目は、7項目を14点満点で評価します。
①支持無しでの座位
- 0:支持無しで座れない、(背もたれやベルトが必要)
- 1:短い時間であれば可能(椅座位)
- 2:支持無しで少なくとも5分座位が可能
②非麻痺側へのパラシュート反応(閉眼)
- 0:転倒しないために麻痺側の肩外転、肘伸展しない
- 1:パラシュート反応が弱い
- 2:正常なパラシュート反応
③麻痺側へのパラシュート反応(閉眼)
- 0:転倒しないために麻痺側の肩外転、肘伸展しない
- 1:パラシュート反応が弱い
- 2:正常なパラシュート反応
④支持しての立位
- 0:支持があっても立てない
- 1:他の物による多くの支持が必要
- 2:少なくとも1分間他の物によるわずかな支持で直立して立てる
⑤支持無しでの立位
- 0:支持無しでは立つ事ができない
- 1:1分以内であればまっすぐ立てる。もしくはより長く立てるがふらふらしている
- 2:1分以上しっかりとしたバランスで立てる
⑥非麻痺側での片脚立位
- 0:数秒以上、動揺して立てない
- 1:4~9秒間バランスよく立てる
- 2:10秒以上バランスよく立てる
⑦麻痺側での片脚立位
- 0:数秒以上、動揺してたてない
- 1:4~9秒間バランスよく立てる
- 2:10秒以上バランスよく立てる
自宅でできるリハビリ
日常生活動作
寝返り
手や足を組むなど健側の手足で麻痺側を補助して顔、肩、骨盤の順で寝返りができるようにします。
手摺りを引っ張って寝返りをすると体幹の筋力をあまり使わないので、なるべくお腹の力を使って寝返りをして下さい。

座位姿勢
左右の坐骨に均等に体重をかけ、背すじを伸ばして座るようします。
特に麻痺側の坐骨をしっかり感じて座面に当たる感覚を健側と比べてみて下さい。

移乗
車椅子やトイレに乗り移る際は一度膝を伸ばしてしっかり立ってゆっくり方向転換します。
手摺りを引っ張って反動をつけて乗り移ると足腰の筋肉はあまり使用されません。

自主トレーニング
お尻上げ

- 仰向けで膝を立てお尻、腰、背中の順でゆっくり挙げる
- 背中、腰、お尻の順でゆっくり降ろす
- 5回を目安に繰り返す
体幹の前傾

- 椅子に座って腕を組む
- 体を前に倒して両足に体重をかけた状態で10秒キープ
- 3回を目安に繰り返す
足挙げ

- 仰向けに寝て麻痺側の踵を床から10㎝程度挙げて10秒キープ
麻痺側の踵を挙げることが難しい場合は、健側の足で補助するか健側の足で行います。
腰に力が入り過ぎないようにお腹に力が入る感覚を感じて下さい。


まとめ
片麻痺の体幹機能の評価とリハビリ方法について簡単にまとめてみました。
もっと詳しく知りたい方のために、おすすめの書籍も紹介しておきます。