今回は麻痺がある股関節や膝、足首の運動がなるべく効率よくできるように病態を踏まえてアドバイスできたらと思います。
片麻痺(下肢)について
片麻痺の回復は表面のアウターマッスルからはじまり、回復するにつれて中にあるインナーマッスルが働くようになります。
はじめに動かしやすくなるアウターマッスルとは反射が起こりやすい筋肉(神経伝達が速い筋肉)です。
反射が起こりやすい筋肉は意図的に力を入れやすい反面、力の加減が難しいという特性もあります。
そのためアウターマッスルを使った運動ばかりをしていると手足の震え、突っ張り、痛みの原因になります。
インナーマッスルが働くことで力の加減ができるようになりますが、そのためには関節が動く感覚をしっかり脳に伝えることが重要とされています。

図にように片麻痺の回復は通常の筋力UPとは異なりますので、状態に応じた運動が必要です。
状態の把握(ブルンストロームステージ)
片麻痺の評価として日本で最も使われているブルンストロームステージについてご紹介します。
この評価は麻痺の状態を6段階で判定します。
評価に使われている運動は回復段階になるので自主トレーニングとしても有効です。
ステージⅠ:弛緩性麻痺
開始肢位:背臥位、両股関節・膝関節屈伸展位
テスト:健側の股関節内転に抵抗を加え、麻痺側の股関節内転筋群の収縮を確認する。
判定:収縮なし → ステージⅠ、収縮あり → ステージⅡ-1

ステージⅡ:痙性発現期
開始肢位:ステージⅠと同じ
テスト:麻痺側の股関節を内転するように指示して、股関節内転筋群の収縮を確認する。
判定:収縮あり→ステージⅡ-2

ステージⅢ:痙性期
①伸展共同運動
テスト:背臥位、麻痺側の膝関節90°屈曲位から下肢伸展。
判定:膝関節伸展20°以下

②屈曲共同運動
テスト:背臥位、下肢伸展位から股関節・膝関節の屈曲。
判定:股関節屈曲90°以上

ステージⅣ:痙性減弱期
3つのテストがいくつできるかでⅣ-1、Ⅳ-2かを評価します。
①股関節屈曲
テスト:背臥位、膝関節伸展位で股関節屈曲。
判定:股関節屈曲30°以上

②膝関節屈曲
テスト:座位、膝関節90°屈曲位から足底を滑らせて膝関節屈曲。
判定:膝関節屈曲100°以上

③足関節背屈
テスト:座位、踵を床に着けたままで足関節背屈。
判定:足関節背屈5°以上

ステージⅤ:痙性減少期
3つのテストがいくつできるかでⅤ-1、Ⅴ-2、Ⅴ-3を評価します。
①足関節背屈(臥位)
テスト:背臥位、下肢伸展位で足関節背屈。
判定:足関節背屈5°以上

②足関節背屈(座位)
テスト:座位、股関節60°~90°屈曲位・膝関節20°以下伸展位で足関節背屈。
判定:足関節背屈5°以上

③股関節内旋
テスト:座位、股関節内旋。
判定:股関節内旋20°以上

ステージⅥ:痙性最小期
スピードテストで評価します。
所要時間は健側の1.5倍以内。
①股関節内旋テスト:座位で股関節内旋を10回繰り返す。

自宅でできるリハビリ
日常生活動作
①座り方
床に足の裏をつけてできるだけ良い姿勢で座ります。
足の裏が床についた感覚や体重をかけたときの感覚を健側と比べて下さい。

②立ち座り
両手を組んだりテーブルや手摺りを使って、できるだけ麻痺側の下肢へ体重をかけてゆっくり立ち座りを行って下さい。

自主トレーニング
①足の曲げ伸ばし
仰向けに寝転んで床に踵をしっかりつけた状態で、踵を滑らすようにして股関節と膝をゆっくり曲げ伸ばしします。
特に伸ばすときに足が突っ張らないようにゆっくり行って下さい。

②足を開いたり閉じたり
仰向けに寝転んで膝を伸ばした状態で、踵が床から離れないように足をゆっくり開いたり閉じたりします。
体が捻じれず股関節だけが動いて足が開く範囲で行って下さい。

③足を開いたり閉じたり(膝立て)
仰向けに寝転んで両膝でボールを挟みます。
挟んだボールをつぶしたり戻したりをゆっくり繰り返します。
