今回は肩関節の機能や運動を制限する原因と運動改善のためのリハビリについてお伝えいたします。
目次
肩関節について
運動制限の原因と主な疾患
運動の制限因子となる硬い筋肉と弱い筋肉は混雑し、これらがアンバランスになるほど運動が制限されます。
①肩関節周囲筋のアンバランス
- 五十肩(肩関節周囲炎)などの肩の痛み
- インピンジメント症候群
- 痙性麻痺
②肩関節・肩甲骨周囲筋のアンバランス
- 上腕骨骨折の固定後
- 腱板損傷の術後
- 乳癌の術後
- 弛緩片麻痺
骨折や術後の固定、重度の麻痺などで肩関節を全く動かせない時期があると肩甲骨周囲の筋肉が著しく衰えます。
肩関節を動かす筋肉
肩関節屈曲(前方から腕を挙げる)の運動を3段階に分けて筋肉の働きをみていきます。
①肩関節屈曲0〜60°
- 動力筋:三角筋前部繊維、烏口腕筋、大胸筋
- 制限因子:棘下筋、小円筋、大円筋
②肩関節屈曲60°〜120°:肩甲骨が動き始める
- 動力筋:僧帽筋、前鋸筋
- 制限因子:大胸筋、広背筋
③肩関節屈曲120°~180°:脊柱が動き始める
- 動力筋:三角筋、棘上筋、僧帽筋、前鋸筋
- 制限因子:大胸筋、広背筋、大円筋
肩関節を安定させる筋肉
肩関節の安定には回旋筋腱板(ローテーターカフ)と言われる4つの筋肉がバランスよく働くことが必要です。

- 棘上筋:肩関節外転に作用
- 棘下筋:肩関節外旋に作用
- 小円筋:肩関節外旋に作用
- 肩甲下筋:肩関節内旋に作用
この筋肉はインナーマッスルなので表面の筋肉が硬くなると働きが悪くなります。
肩甲骨を安定させる筋肉
肩甲骨は肩関節の運動に常に先行して安定に働くことで運動をスムーズにしています。
肩甲骨の安定には上方回旋筋群と下方回旋筋群がバランスよく働くことが必要です。
上方回旋筋群:僧帽筋、前鋸筋
下方回旋筋群:肩甲挙筋、小胸筋、菱形筋
疾患などでバランスが崩れた場合の多くは
- 上方回旋筋群→筋力低下
- 下方回旋筋群→高緊張

腕を挙げようとしたら肩甲骨が引ける、肩が挙がるという方は肩甲骨が不安定な状態です。
腕を挙げる運動よりも肩甲骨周辺の前鋸筋、僧帽筋(特に下部繊維)から鍛える必要があります。
前鋸筋は肩甲骨を前方に動かす唯一の筋肉です。
自宅でできるリハビリ
肩甲骨を安定させる運動
肩関節が90°まで上手く上がらない方の運動です。
①肩甲骨を前に引き出す
腕を90°上げた位置で肩甲骨を引き出した状態がキープできるようになることを目指します。

- 両手を組んで腕を90°もしくは挙げれるところまで挙げる
- 体は動かさず両手のみを前に出して肩甲骨を引き出す
- 両手を前に出した状態で10秒キープ
②肘の曲げ伸ばし
肘を動かしても肩甲骨を前方に引き出した状態をキープできるようになることを目指します。

- 両手を組んで肩甲骨を前に引き出した状態から開始する
- 両肘の屈伸をゆっくり5回繰り返す
※肘を曲げたときに肩甲骨が後ろに引けないように注意
③四つ這い
体重をかけても肩甲骨を引き出した状態をキープできるようになることを目指します。

- 四つ這いになる
- 肩甲骨を前に引き出し背中を丸めて10秒キープ
肩関節を安定させる運動
肩関節が90°から上手く上がらない方の運動です。
①腕を外に開く

手のひらが正面を向くようにして真横に腕をゆっくり上げて、ゆっくり下ろします。
痛みのない範囲でゆっくり繰り返して下さい。
②両手を組んで挙げる

両手を組んで肘を曲げた状態から、真上に腕を挙げます。
下ろすときは肘を曲げてから腕を下げます。
痛みのない範囲でゆっくり繰り返して下さい。